「フォーカシング・イリュージョン」とは、特定のことについて集中して考えている間は、それが人生の重要な要素のように思えても、実際にはあなたが思うほど重要なことでもなんでもないという錯覚を表す言葉だ。つまり、人生における「特定の要素」だけに意識を集中させると、その要素が人生に与える影響を大きく見積もりすぎてしまう。
億万長者だったら、幸福度は上がるのか?
「フォーカシング・イリュージョン」の影響を特に受けやすいのは、なんといっても「お金」に関してだろう。
世界で最も裕福な人のひとりであるウォーレン・バフェットは、自分の生活を平均的な市民の生活と比較してみせたことがある。バフェットの暮らしは、一般市民の暮らしとなんら変わりがない。バフェットは、あなたと同じように普通のマットレスの上で寝て過ごし、あなたや私と変わらない値段の既製服を買っている。
彼の好きな飲み物はコカ・コーラ、学生が食べているものよりも高級なものや健康的なものを食べているわけでもない。普通の机と椅子を使って仕事をし、彼のオフィスは1962年からずっと、ネブラスカ州オマハの、どこにでもあるようなオフィスビルだ。
唯一の違いは、飛行機での移動の仕方だ。私たちはエコノミークラスに押し込まれるが、バフェットはプライベートジェットを持っている。しかし、人生のたかだか「0.1%」を過ごすだけの飛行機のシートの狭さに意識を集中させていては、人生を浪費するだけだ。
広角レンズで人生を眺める
もし、億万長者だったら、他の仕事を選んでいたら、別の場所に住んでいたら、自分の人生はどのぐらいよくなっていただろうか。と、あなたも、考えたことがあるのではないだろうか。確かに少しは違っていたかもしれない。でも、何かひとつの要素が変わったとしても、その結果生まれる違いは、あなたが思っているよりずっと少ない。
特定の要素だけを過大評価しないよう、十分な距離を置く必要がある。自分の人生を、できるだけ距離を置いてとらえてみてほしい。今はとても重要に思えるものが、全体図にはほとんど影響を与えないほどの小さな点になっていくのがわかるだろう。
良い人生を手に入れたければ、ときには「広角レンズ」を通して、その全体を眺めてみることだ。
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