落選を狙うと、保育園に入れなくても、給付延長できなくなる?
育児休業給付金は、子どもが、1歳になるまで支給されますが、保育所に入れないなどの理由がある場合は、1歳6ヶ月、さらに2歳まで延長することが可能です。
こうした制度の中、自治体に対する「育休延長狙い」の保育所入所申込が、問題視されるようになりました。
そこで、2025年4月1日より、育児休業給付の受給期間延長手続きが厳格化されます。
これまでは、1歳時点で保育園に入れなかったことを証明する書類(入所保留通知書など)を提出すれば、延長できましたが、2025年4月以降は、提出書類が追加され、審査が厳しくなります。
同様に、これまでは、市区町村によっては、育休延長のために保育園の落選を希望することもできましたが、今後は落選希望していないか、審査されるようになります。
2025年4月から始まる、育児休業給付金の支給対象期間の、延長手続きの厳格化について、詳しく解説します。
手続きが厳格化されることで、どのように対応すればよいのか、一緒に見ていきましょう。
2025年4月からの変更点
提出が必要な書類
2025年4月から、追加される提出書類は、「本人記載の申告書」と「市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し」の2つです。
提出書類をまとめると、現行も必要な書類「市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知」に、上記の追加書類2つを合わせた、以下3つの書類を提出する必要があります。
- 本人記載の申告書(育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書)
- 市区町村に保育所等の利用申し込みを行った際の申込書の写し
- 市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)
それぞれの書類について、詳しく説明します。
①本人記載の申告書(育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書)
育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書は、厚生労働省が様式(※1)を公開しており、以下の内容が盛り込まれています。
「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書」には「入所保留を積極的に希望する旨の意思表示をしていませんか」という質問や、「通所時間(片道)が30分以上の場合の理由」を書く欄があります。
実際に申し込んだ際の写し(申込書のコピー)も提出するので、嘘の記載をすることもできません。
また、合理的な理由なく、自宅から30分以上かかる保育園のみ入園希望としている場合は延長ができません(詳細は後述します)。
(※1)厚生労働省「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書」
②市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
子どもが1歳に達する日の翌日以前の日を、入所希望日として入所申し込みをしていることが分かる申込書の写しが必要となります。
申込書の写しは、市区町村に申し込んだものと同じものであれば、市区町村の受付印は不要です。
利用申し込みの内容を途中で変更した場合は、変更後の申込書の写しを提出する必要があります。また、申込書の写しは、提出した全てのページを提出します。
③市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知
入所保留通知書や、入所不承諾通知書については、交付タイミングが重要です。
子どもが、1歳に達する日の翌日の2か月前以降に発行された通知が必要
具体的には、子どもが1歳に達する日の翌日時点で、保育が実施されないことを確認するため、発行年月日が、子どもが1歳に達する日の翌日の2か月前(4月入所申し込みの場合は3か月前)の日以後の日付となっている市区町村の通知書が必要となります。
延長要件
これまでは、1歳時点で保育園に入れなかったことを証明する書類(入所保留通知書など)を提出すれば、延長できましたが、2025年4月以降は、追加された「本人記載の申告書」と「市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し」の2つの書類をもとに、延長要件を満たすか、審査されます。
申し込んだ保育所等が合理的な理由なく、「自宅または勤務先から遠隔地の施設のみとなっていないこと」や、「市区町村に対する保育利用の申込みに当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示を行っていないこと」等の延長要件(詳細は後述します)を、ハローワークが確認し、育児休業給付の延長の適否を判断する予定です。
具体的な延長要件は、以下の3つです。
- 保育利用の申込:あらかじめ市区町村に対して保育利用の申し込みを行っていること
- 速やかな職場復帰の意思:速やかな職場復帰のために、保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認めること
- 保育所の利用見込みがないこと:子が1歳に達する日の翌日時点で保育所等の利用ができる見込みがないこと
それぞれについて、詳しく説明します。
①保育利用の申込
市区町村への保育所等の入所申し込みは、これまでは、特に明確な規定はありませんでしたが、2025年4月以降は、子が1歳に達する日までに、入所申し込み行う必要があります。
申し込みを失念していた、問い合わせ時に「入所困難」との回答があったことで、申し込みをしていなかった等で、子が1歳に達する日までに申込をしていなかった場合は、延長できません。
②速やかな職場復帰の意思
以下①~③を全て満たす必要があります。
- 子が1歳に達する日の翌日以前の日を入所希望日として入所申し込みをしていること
- 申し込んだ保育所等が、合理的な理由(※2)なく、自宅から通所に片道30分以上要する施設のみとなっていないこと
- 市区町村に対する保育利用の申し込みに当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示をしていないこと
(※2)の「合理的な理由」については、「申し込んだ保育所等が本人または配偶者の通勤経路の途中にある場合」や「自宅から30分未満で通うことができる保育所等がない場合」、「きょうだいが在籍している保育所等と同じ保育所等の利用を希望する場合」等、認められる理由が原則として決まっています。
③保育所の利用見込みがないこと
子どもが、1歳の誕生日当日で、保育所等の利用ができる見込みがないことを証明するために、子どもが、1歳に達する日の翌日の2か月前(4月入所の場合は3か月前)以降に発行された通知(入所保留通知書や、入所不承諾通知書)を提出します(上記の「③市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知」のことです)。
よくある質問(Q&A)
Q1. 2025年4月以降、落選を狙うと、保育園に入れなくても、給付延長できなくなる?
A1. 上記の通り、「提出が必要な書類」を提出し、「延長要件」を満たしていれば、これまで通り、延長ができます。
延長ができなくなるケースとしては、申し込んだ保育所等が、合理的な理由(※2)なく、自宅から通所に片道30分以上の保育所等のみの場合、延長が認められません。
分かりやすく言い換えると、片道30分未満に、定員割れで入所できる保育所等があるものの、「育休延長」を狙い、片道30分以上の、定員超で入所できない保育所等のみに、申し込むというのが、上記のケースです。
人口の少ない地域にお住まいの方は、片道30分未満に、定員超で入所できない保育所等がないケースが考えられ、2025年4月以降、そのような方の「育休延長」が難しくなります。
(※2)の「合理的な理由」については、「申し込んだ保育所等が本人または配偶者の通勤経路の途中にある場合」や「自宅から30分未満で通うことができる保育所等がない場合」、「きょうだいが在籍している保育所等と同じ保育所等の利用を希望する場合」等、認められる理由が原則として決まっています。
Q2. 手続きが厳格化される理由は何ですか?
A2. 育児休業給付金の支給延長を目的として、実際には保育所の利用を希望していないにもかかわらず申し込みを行うケースが増えたため、制度の適正な運用を図るためです。
Q3. 手続き変更で、注意すべきことは何ですか?
A3. 2025年4月以降は、保育所等への申し込み期限と入所希望日に関する要件が明確化されます。これらの要件を満たさない場合、給付金の延長が認められない可能性がありますので、十分な注意が必要です。
育児給付金の延長審査が変わる!落選を狙うと給付延長できない?2025年4月以降の手続きを解説 まとめ
2025年4月から始まる育児休業給付金の支給対象期間延長手続きの厳格化について解説しました。
育児休業給付金は、育児と仕事の両立を支援する重要な制度です。
手続きの変更点を理解し、適切に対応することで、必要なサポートを受けることができます。
疑問がある場合は、早めにハローワークに相談することをお勧めします。
【参考サイト】2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります[466KB]